2014年2月5日水曜日

●『創業一四〇〇年‐世界最古の会社に受け継がれる一六の教え』(金剛 利隆 ダイヤモンド社 2013) 


「世界最古の会社」として知られるのが、大阪に本社を持つ建設会社・株式会社金剛組だ。
飛鳥時代の578年に創業、2013年に1435周年を迎えた。
聖徳太子から四天王寺の建立を命じられた時からの伝統を守り、代々「四天王寺正大工職」を襲名し、金剛姓を継承する。

本書は、同社社長、会長を歴任し、現相談役を務める第39世四天王寺正大工職・金剛利隆氏が、2005年の倒産の危機を乗り越えた経験等をもとに「なぜ金剛組は1400年も存続することができたのか」を解き明かしている。

危機を乗り越えて金剛組が生き残ってきた理由の一つには、確かな技術を持つ人材を育て続けてきたことにある。

二つ目は、後継者の選び方が挙げられる。金剛組は「金剛」の姓を守り通しているが、そのすべてが直系ではない。
それは、血縁以上に、宮大工をはじめとする職方をまとめあげる能力を重視すべきという教訓があるからだ。

三つ目は、原点を忘れないこと。第32世金剛喜定は、子どもたちのために遺言書を残している。そこには、「職家心得之事」という16条からなる金剛家当主としての心構えが記されていた。
この16の教えには、分相応の「中庸の精神」を持つことの大切さが綴られている。

2005年になると、会社更生法と民事再生法のどちらを申請すべきなのかというところまで検討しなければならない事態にきていた。
それを救ったのが高松建設だった。高松建設・高松孝育会長(当時)は「金剛組を潰したら、大阪の恥や!」とまで言った。
それによって、金剛組は公的支援を受けずに再建の道を歩き出したのである。

再出発をするに当たっては、金剛組の大原点である社寺建築に立ち返ることから始まった。「宮大工なくして金剛組はない。社寺建築こそ金剛組の原点である」。
そして、社寺建築以外の仕事を一切請け負わないという約束が設けられた。

経営に行き詰まったときには「原点に帰れ」という教訓をよく耳にする。
しかし金剛組の場合、「原点」は何百年も前に遡る必要がある。「原点」に帰るときには、「現代」と「原点」のすり合わせが必要だ。
そのすり合わせが乖離せずできたときに、「復活」が可能になるのだろう。

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