2014年3月2日日曜日

●『事業創造のロジック‐ダントツのビジネスを発想する』(根来 龍之 日経BP社 2014)

創造的な戦略を立てるためには何が必要か。
競争戦略論やビジネスモデル論を勉強すればビジネスの創造性が高まると思っている人は多い。
しかし、理論や手法を参考にして、自分の頭で考えることが大切だと著者は説く。
本書は、ビジネスモデルの勝利によってダントツの成功を収めた会社を分析し、ビジネスモデルに埋め込まれているロジック、すなわち「考え方」をたどることで、その会社の強さの秘密を明らかにしている。

たとえば大田区を中心に東京23区に営業範囲を広げており、1日に提供する弁当の数量は平均7万食という事業所向け弁当を供給する「玉子屋」の場合。
1日に2000食売れば大手と言われる弁当業界にあって、他社の追随を許さない規模である。年商は約90億円、従業員数は約700人。

同社が原価率の高い弁当を製造しても赤字にならない理由の1つが、弁当の廃棄率を極限まで下げていることだ。
成功の肝とも言えるのは、ユニークな配送方法である。通常のルート配送は、担当エリア別に必要な数量の商品を積み込んで配送車が散っていく。

しかし玉子屋は違う。
まず、工場から離れた地域を担当する先発組は、予測される受注数よりも多めの弁当を持って工場を出発し、担当エリアで弁当を配達する。
その後、配送を終えた先発組は工場に戻らず、遅れて出た後発組と連絡を取り合いながら、弁当が不足しているエリアの配送組と落ち合い、過不足分の弁当を渡す。現場の配送員たちの連携プレーによって、廃棄率を極限まで下げているのだ。

経済性原理がうまく働く会社には、その重要なポイントとなる「駆動要因」がある。
玉子屋の「駆動要因」は「1品メニュー化」だ。1品メニューだから、材料仕入れでまとめ買いができるし、調理の効率が良くなるし、配送の連携プレーができて廃棄率を下げられる。

もうひとつ、重要なポイントは容器の回収だ。容器を回収し、そのときにすべてフタを開けて食べ残しの状況をチェックする。その活動によって、顧客の反応を的確に把握することができ、その情報をメニューの改善に生かす。そして容器を再利用してコストを下げる。容器を回収に行くことによって営業活動も強化される。

さらには社員への還元というのも大きい。低コスト化の取り組みによって430円という低価格でも社内に付加価値が残り、もっと安くすることもできる。しかし、より価格を安くするのではなくて、その分を社員に還元している。
そのことを社員も知っているからこそ、一生懸命頑張る。そういう良い循環を生み出しているのである。

そのほか、サウスウエスト航空やセブンイレブンジャパンなどの事例も挙げられている。
本書で取り上げられている企業のロジックやビジネスモデルは、その会社に関する公開情報や経営者の発言などをもとに、あくまでも著者がその背景を解釈したものだ。大切なことは、そのエッセンスを知ったうえでいかに自分で創造できるかであろう。

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